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雑記 ~ 卒業式の日に失ったモノ ~

 先日、私が勤務している中高一貫校で、高校3年生の卒業式がおこなわれた。今回の卒業式は、私にとっては大切なものだった。私は授業だけを担当する非常勤講師なのだが、このたび卒業する学年は、中1のころからずっと関わってきた学年だった。高2以降は選択科目のみでの関わりになったので、全員を担当したわけではない。それでも、数名の生徒は、6年間ずっと私が担当し続けてきた。

 卒業式の日の朝、彼らが中1だったころの写真を机から取り出して、感慨深く眺めた。みんな、面影を残したまま大きくなった。廊下で絶叫しながら鬼ごっこをしていた彼らを叱ったこと・・・授業中にゴキブリが教室を飛び回ったこと・・・私のクズみたいなハゲネタや自虐ネタで、いつも爆笑してくれたこと・・・写真を眺めているだけで、いろいろな思い出がよみがえってきて、泣きそうになった

 卒業式の最中はもちろん、必死で涙をこらえた。大げさに言うと、私の中でひとつの時代が終わったような思いがした。明日からは、彼らはいないのだ。何か、大切なものを失った気がした。

 卒業式のあと、私は講師室に戻った。他の講師の先生らはすぐに帰ってしまって、私はひとり、講師室で仕事を続けていた。しばらくすると、遠くの方で卒業生が騒いでいる声が聞こえてきた。どうやら、少し離れたところにある職員室の前で、先生方と記念写真を撮っているらしい。楽しそうな声を聞きながら、私は講師室でひとり淡々と仕事・・・何か寂しい。あまりに寂しかったので、講師室を飛び出して職員室の前に出て行ってみようかと思ったが・・・若いころに別の学校で、そんな感じで出て行ってスルーされ、みんなが写真を撮っているようすを黙って見ているという地獄のような思いをしたことがあった。だから、今回はガマンした。私はこみあげてくる思いをこらえながら、ひとりで仕事を続けた

 しばらくすると、数名の生徒が講師室にやってきたありがたい気持ちでいっぱいだった。そのうちのひとりは、6年間ずっと関わってきた生徒だった。「6年間、お世話になりました」と言われただけで、涙がこみ上げてきそうだった。写真を撮って、少しおしゃべりをしてから、彼らは去っていった。数十秒後、遠くの方から大きな声が聞こえた。

「え!? 先生おるん!? 行こ行こ!!!」

 どうやら、さっき去っていた生徒らが、私が講師室にいることを近くにいた生徒らに伝えたらしい。彼らには下校時刻があるので、あまり残された時間はなかった。だから、かなり慌ただしい感じではあったが、バタバタと数名の生徒がやってきた。そのうちのひとりの生徒から手紙をもらい、写真を撮って、さほどゆっくりと会話もできないまま、彼らを見送った。

 彼らがみな下校したあと、私はさっきもらった手紙を読もうと思った。手紙をくれたのは、中1から高2まで、ずっと担当し続けた生徒である。高3になって、選択科目の関係で、授業を担当することができなかった生徒だ。さっき手紙を受け取った際に、その生徒はいくつか封筒を握っていたので、たくさんの先生に書いてきたんだろう。たくさんの先生に書こうと思ったら手間も時間もかかる。おそらく、簡潔に感謝のことばを書いてきたのだろうと想像した。さほど期待せずに封筒を開けて、手紙を取り出して驚いた。便箋2枚を埋め尽くすかのように、小さな字でびっしりと書かれていたのだ。想定外のことに圧倒されながら、手紙を読み始めた。冒頭に書いてあったのは、これだ。

まず、ぶっちゃけますと、高3で先生の授業受けられなくて悲しかったです。

 これはいかん。いきなり泣かせにくるやつだ。その生徒は、いつも前向きに授業を受けていて、家でもよく勉強していた。だから、私は「できることなら、高3になっても担当して伸ばしてあげたい」と前から思っていた。なんなら、担当できなくて悲しかったのはこっちだ。冒頭から泣きそうになりつつ、続きを読んだ。書かれていたのは、教員冥利に尽きるような、ありがたいことばのオンパレードである。

先生の授業もプリントもテストも全部大好きでした。
中1の初めての先生の授業で感動して、この先生の授業は真面目に聞いて、頑張ろうと思ったことがありました。
授業の後、先生が話してくださったこと、姉や親に話してました。
どの先生とも話せる生徒でしたけど、先生にはリスペクトの感情があって、なかなか話しかけにいけなかったし、緊張していました。
先生なしでは世界史人生はなかったと思います。

 キリがないので、これ以上は書かないが、ずっとこんな感じなのである。相当に過大評価されているが・・・今までに生徒からもらった手紙の中で、圧倒的に嬉しい内容であることはまちがいない。そして、手紙の最後はこれだ。

感謝しかないです。ありがとうございました。 尊敬してるし、大好きです。笑

 こんなん、アホなカン違い教員が読んだら、変な気を起こすんじゃないだろうか。私は幸いにも変な気は起こさなかったが、いたく感動した。とりあえず、この手紙は、読むたびに元気になれるような内容だ。いつでも読めるようにスマホで手紙の写真を撮って、仕事で疲れたときにいつでも読めるよう、机の中に大切にしまい込んだ。

 その後、私は退勤した。帰りの電車内で、早くもさっき撮った手紙の写真を見返した。何度読んでも、泣きそうになる。電車の中で感極まって、目が涙で潤んでいるのがわかった。涙がこぼれないよう、目を閉じた。きっと、正面の席に座っていたオバサンは不審がっていただろう。小汚い中年の薄毛男性が、スマホを見ながら目を潤ませ、必死に目を閉じていたのだから。

 電車を降りてから、私は寄り道をすることにした。あまりに感動しすぎて、「今晩は美味しいモノを食べて、最高の締めくくりにしよう!」という気分になったので、美味しいモノを買うためにショッピングセンターへ行ったのだ。普段は買わないような惣菜をゴキゲンにいくつか買って、それらを通勤用リュックにパンパンに詰めて、家に向かって歩き出した。

 そのときである。唐突に、「ブチッッッ!!!」という変な音が聞こえた。一瞬、何が何だかわからなかった。「まさか」と思って確認してみると・・・通勤用リュックの肩ひもが片方、完全にちぎれているではないか。この通勤用リュックは、たしか5年~6年前から使っていたモノ・・・つまり、卒業した彼らが入学してきたくらいの時期から使い続けていたモノだ。

 最後の最後に、変な奇跡を起こしてしまった。私は、今までの教員人生でもっとも思い入れのある学年を失い、同じ日に、彼らとほぼ「同期」の愛用のリュックを失ったのである。

 思いがけない一日の終わりになってしまったが・・・とにもかくにも、卒業生の今後の成長や幸せを祈りたい。誰もこの記事を見ていないと思うが、最後に、授業で何度も言ってきたこのことばを贈ろう。

みなさんは「病気なく、ケガなく」・・・私は「病気なく、毛がある」という方向で、今後もがんばっていきましょう!!

                       < 完 >

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