夕方に、私は修士論文の提出期限を確認するため、久しぶりに大学へ行くことにした。大学へ向かって歩いていると、私の前に、少し足を引きずって歩いている男性がいた。それは、中学時代の恩師のS先生であった。どうやら、S先生は、左足が異常にむくんで歩きづらいらしい。そのため、S先生は、信号待ちをしている間に靴下を脱いで、足の具合を確認していた。特に意味はなかったが、私も靴下を脱いで、自分の足を確認した。
その後、私とS先生は、大学の敷地内に入っていった。S先生は、足の具合を診てくれる人がいないか、探し回っていた。しかし、夕方ということもあって、医務室のような場所はすべて閉まっていた。それでも、S先生は、足を診てくれる人を探し続けていた。
一方、私は修士論文の提出期限を確認すべく、文学部の掲示板に足を運んだ。掲示板の横にあった机には、コンビニ弁当のような雰囲気の弁当が置かれていた。その弁当を覗き込んだところ、どう見ても安っぽい弁当なのに、弁当に「17500円いただいてもよろしいでしょうか?」というようなことが書かれた紙が貼られていた。どうやらコロナ禍のために弁当屋も苦戦を強いられているようで、特に教授には高い値段で弁当を買ってもらっているらしい。
また、弁当の近くにあったコップを見てみると、コップに「すみっコぐらし」の「とかげ」の絵が描かれていた。私は、その絵がカワイイと思って、コップの写真を撮ろうと思った。しかし、私は修士論文の提出期限を確認しなくてはならないので、写真を撮るのはいったん諦めて、掲示板に貼られている紙を順に確認していった。ところが、年齢的なものもあってか、掲示板に貼られている紙に書かれている文字が読みづらく、私は苦戦した。
困ったことに、一通り確認したにもかかわらず、どこにも修士論文の提出期限は書かれていなかった。私が困り果てていると、ひとりの女子大学生が掲示板のところにやってきた。私は、上半身はジャケットを着ていたが、下半身は昭和の小学生が履くような短パンだったので、恥ずかしさをおぼえた。そのため、私は慌ててその場を離れた。
結局、私は修士論文の提出期限がわからず、動揺した。しかし、冷静に考えてみれば、私は20年ほど前に修士論文を提出していたので、今さら修士論文を提出する必要などなかった。
< 完 >
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