私は、なぜかH先生(約50歳・女性)といっしょに教室へ入り、2人で授業をすることになった。我々はまったく打ち合わせをしていなかったが、私はすさまじいテンションで、生徒たちに向かって言った。
「今日は、みなさんにぜひとも聞いてもらいたいと思う話があるんです!! H先生にも、ぜひこの話を聞いてもらいたい!! っていうか、さっき話してた、あの話ですよ!!」
そう言いながら、私は黒板に『ノルウェーの森』という作品名を書こうとした。しかし、「ウェ」の部分がうまく書けず、私は何度も消して書き直した。
しばらくして、ようやく「ウェ」の部分が正しく書けた。ところが、今度は「ノルウェー」が正しいのか「ノルウェイ」が正しいのか、わからなくなった。私は強い不安に陥りながらも、「ノルウェー」の表記のままで話を進めることにした。
ところが、作品について話そうとしていたにもかかわらず、私は作品を読んだことがなかったことに気づいた。そのため、きちんと語れるのかどうかが心配になり、私はさらに強い不安に陥った。
さらに、私は「この感じでしゃべったら、生徒の多くは顔を上げず、つまらなそうに私の話を聞くんじゃないか? そのようすをH先生が目にしたら、私の普段の授業もこんな感じだと誤解されて、『ヘタクソな授業をするヤツだ』と思われてしまうんじゃないか?」などと考えて、さらに強烈な不安に陥った。
< 完 >
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