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雑記 ~ テスト期間事件簿06 "イカレた問題文事件" ~

 今回のテスト期間に起こった事件の第6弾。

 これは、私が意図的に起こした事件なのだが、ぜひ紹介しておきたい。私はいつも、テストで何かしらの「イカレた問題」を出題している。今回は、世界史のテストでイカレたリード文を載せてみた。拙著『超個人的 世界史雑談集』にも記したのだが、私の同僚に、ドイツが好きすぎる60代の数学の先生がいる。その先生にまつわるエピソードを、リード文にしてみたのだ。以下がそのリード文だが、これらはすべて実話である。

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 私は、数学科のA先生を猛烈に尊敬している。A先生は、数学の先生であるにもかかわらず、ドイツLOVEなのだ。以前、私の授業プリントをご覧になって、A先生は「ケルン大聖堂の話、授業でするんか? あれ、立派なモンやなァ!」とおっしゃった。そこで、私は「ケルン大聖堂も立派ですけど、その隣にある橋もキレイですよね!」と答えた。すると、A先生は、すぐさまおっしゃった。

「 あぁ! あの橋なァ! 『ホーエンツォレルン=ブリッケ』なァ! 」

 いくらドイツLOVEとはいえ、橋の名称を即答なさるとは。恐れ入りすぎて、ことばを失ったのを覚えている。A先生は、続けておっしゃった。

ケルン大聖堂の裏に、『ゲルマン=ローマ博物館』があってな、そこもなかなかエェもん置いとるんや! ケルンは昔、ローマの『コロニア』やったやろ? せやから、ローマ時代のモンがたくさんあるんやなァ! 」

 なんと豊富な知識だろうか。ケルンは昔、ローマの「コロニア」、つまり「植民市」だった。当時の地名は「コロニア=アグリッピナ」であり、その「コロニア」という語が「ケルン」という地名の由来なのだ。ヘタをすれば受験生でも知らないような知識だが、A先生はそのあたりもご存知らしい。

 しかも、A先生は単にドイツLOVEなだけでなく、ドイツ語も堪能なのだ。ある日など、A先生はごくごく普通にカバンからドイツ語で書かれた『アンネの日記』を取り出し、「読むか?」と私に差し出してこられた。私はドイツ語どころか英語もできないし、なんなら日本語もあやしい。一方、A先生は、通勤時の電車内でその本をお読みになっているという。格が違いすぎる。

 また、別の日には、こんなことをおっしゃっていた。

「 今なァ、ドイツ語で『アルプスの少女ハイジ』を読んどるんや! 読んでて 気づいたんやけど、作品の中に、カルヴァン派の勤勉な要素がみられるワ! 」

 私には何のことだかサッパリだが、そんなことにお気づきになるなんて、スゴいとしか言いようがない。スゴいといえば、“ Vogelfrei ”の件も印象的だ。A先生によると、この語は、直訳すれば「鳥は自由」という意味になるという。1521年に開かれた【 X 】帝国議会において、カール5世がルターの「法の保護」を奪ったという話は有名である。実は、“ Vogelfrei ”という語には、「法の保護を奪う」という意味があるのだ。A先生はおっしゃった。

「 国から守られることはなくなるけれども、ルターという名の鳥は自由になった ということやなァ・・・。 」

 そんなA先生は、少し前から、ドイツ語で書かれた難解なドイツ史の本をお読みになっている。たしか2~3か月ほど前に、A先生は私に「神聖ローマ帝国の地図、あるか?」と聞いてこられた。なんでも、そのドイツ史の本に出てきた地名を調べたいとのこと。私はさっそく、パソコンに入れていた地図を眺めてみた。すると、A先生が探してらっしゃった“Kleve”という地名を発見した。A先生は「これやこれや!!」とお喜びであった。そして、同時に、私は気づいた。1534年に【 Y 】法を発布してイギリス国教会を創始したことで知られるヘンリ8世の4人めの妻が「クレーフェの公女」なのだが・・・“Kleve”というのは、この「クレーフェ」のことではないか! 思いがけない形でヘンリ8世の妻の出身地がわかり、私は感銘を受けた。それと同時に、すぐに“Kleve”が「クレーフェ」のことだと気づかなかった自分の未熟さも痛感した。

 最後に、最新のエピソードを紹介しよう。先日、A先生は、英語科のK先生と楽しげに会話をされていた。そのとき、A先生は、前述のドイツ史の本のページをめくりながら、「今、このあたりを読んどるんや。ここの、1756年と書いてあるあたり・・・」とおっしゃった。私は、オデコと目をキラキラさせて、すぐさま会話に首を突っ込んだ。

「 1756年ということは、七年戦争のあたりですね!! 」

 A先生は目を丸くして、「やっぱりアンタ、よぅわかっとんなァ!!」とおっしゃった。尊敬するA先生からお褒めのことばをいただき、私は大いに満足であった。
 今後、私は世界史の授業を担当し続けるかぎり、A先生から学んだことを生徒たちに語り伝えることを誓おう。そして、授業後にチョークで真っ白になった手をしたA先生がおっしゃったこの名言(迷言)も、いつか流行させたいものである。

「 手ェ洗ぅてくるワ!! ついでに、足も洗ぅてきたろかなァ!! 」

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 以上が、そのリード文である。さすがにここでは省略するが、実際のテストでは、このリード文のあちこちに引いた下線部分に関連する問題を出題した。

 これが、なぜ「事件」なのかというと・・・A先生は、本年度をもって退職なのだ。リード文の最後に「足も洗ぅてきたろかなァ!!」というセリフがあるが、これは「A先生が本年度で退職する」ということを暗に示したものなのである。基本的に、人事に関することは極秘。だが、私はテストのリード文を通じて、遠回しにA先生が退職することを生徒に漏らしたのだ。

 実は、A先生は非常に優秀で人望も篤い先生なのに、校長から「契約は本年度まで」と一方的に告げられたらしい。この件で、私は非常に憤慨していた。ここ数年、私の勤務校では、退職者の補充として、校長が知り合いを連れてくるというケースが頻発している。一部の講師の間で「仕事がなくて困ってる知り合いに、仕事を斡旋してるんじゃないか?」と言われるほど、知り合いを連れてくるのだ。で、その校長の知り合いが、非常に高確率で「ポンコツなのだ。そういうこともあって、現在、私の勤務校はポンコツ教員だらけになっている。A先生の後釜の先生も、それなりの確率でポンコツだろうなぁ・・・などと考えていると、腹立たしくてしかたがない。

 ちなみに、私は少し前におこなわれた校長面談のとき、「人事に関することを、むやみに話すな」と校長から注意を受けていた。私にはまったく心当たりがなかったので、「心当たりがありません」と正直に答えたのだが、ポンコツ校長から納得のいく答えは返ってこなかった。実は、この件に関する反発心もあって、私はテストのリード文でA先生の退職を遠回しに漏らしたのである。もちろん、相当な遠回しなので、リード文を読んで「A先生が退職するのか!」と気づいた生徒はいないはず。人事に関することを漏らしたことにはならないだろう。

 なお、もし校長が今回のリード文の件を「人事に関する情報漏洩だ!」と指摘してきたら、私は即座にこう言い返してやろうと決めている。

「副校長が『体育科のK先生が退職する』という件を2~3か月前から一部の先生に漏らしてますので、先にそちらの注意をお願いします。」 

                       < 完 > 

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