突然、車イスに乗った40代くらいの角刈りのオッサンが、私の目の前にタイムスリップしてきた。オッサンは、「遅刻してまうやないか!」などと言って、大慌てであった。どうやら、オッサンといっしょにタイムスリップしてきた人がいるらしく、その人のせいで、オッサンは何かに遅刻しかけているらしい。
オッサンは、すさまじい勢いで車イスを動かして、目的地へ向かって進んでいこうとした。しかし、その数秒後、オッサンは3段ほどの階段をムリヤリに車イスでのぼろうとして盛大にひっくり返り、後頭部を強打しながら車イスから投げ出されて、ほぼ1回転した。私は、そのオッサンとあまり関わりたくなかったので、ひっくり返っているオッサンには手を貸さず、無言で倒れた車イスを起こした。
その後、オッサンは、なぜか車イスを使わずに私の前を普通にバタバタ歩き回りながら、困惑した雰囲気で何かを探し始めた。オッサンが言うには、夏休みの宿題を紛失してしまったらしい。しかし、どこを探しても、宿題は見つからない。
私は、「宿題が近くに落ちていないということは、オッサンといっしょにタイムスリップしてきた人が、宿題を持って先に目的地へ向かった可能性がある」と思った。私は、そのことをオッサンに告げ、とりあえずその人を探してみるよう助言した。
< 完 >
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