いっしょにいた知人が、手のひらサイズの小さな太鼓のようなモノにうっかり触れて、バラバラにしてしまった。実は、その太鼓のようなモノは、私のUSBメモリであった。そして、そのUSBメモリには、生徒たちの成績データや、近いうちにおこなわれる予定であった実力テストの問題が入っていた。
そこに、もと校長のN氏(約70歳・女性)がやってきた。N氏は「なんとか直せるんじゃないの?」というようなことを気楽に言ってきたが、とても直せそうな気がしない。さらに、よく確認してみると、USBメモリは単にバラバラになっただけではなく、一部の部品が完全に破損していた。そのため、元に戻る可能性は限りなくゼロであった。
私は、周りにいた知人・先生方・N氏に対して、「このメモリの中には、成績データや実力テストの問題などが入っています。極力、成績やテストの提出期限に間に合うようにしたいと思いますが、イチからやり直しをすると思いますので、もし間に合わなかったら申しわけありません!」と、堂々と、かつ、高らかに宣言した。
その後、私は「ちょっと試しに、このメモリをパソコンに差してみます」と言いながらパソコンのほうに向かっていった。そんな私のようすを、N氏は信じられないほど険しい表情で見つめていた。
< 完 >
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