先日、知り合いが抽象画の個展をひらいたという情報が入った。その知り合いは、何年かに1度、個展をひらいている。個展をひらいたという連絡がくるたびに、「精力的に活動していて、すごいなぁ」と思うのだが・・・申しわけないけれど、私はその個展にほとんど行ったことがない。今回も、少し悩んだが、見送らせてもらった。
我ながら残念なことに、私は抽象画をまったく理解できない。大学のときに芸術学の先生が、講義で「抽象画は、誰でも美しいと思えるように描かれているのです」とおっしゃっていた。抽象画には、普遍的な美しさがあるらしい。でも、私はセンスがまったくないのか、抽象画を「美しい」と思ったことがない。いつも、「よくわからんなぁ・・・」という感覚しかおぼえないのだ。
上記の知り合いの個展に初めて行ったときのことは、よく覚えている。キャンバス全体に深緑の大きな渦が描かれていて、私はまったく意味がわからなかった。そのとき、作品を描いた本人が横にいたので、私は「これ、どういった絵なんですか?」と質問した。返ってきた答えは、これだった。
「ネコちゃんよ。うちで飼ってるネコちゃん。」
ネコだと聞いて、改めて緑の渦巻きを凝視してみたが・・・いくら見ても、ネコ感はどこにもなかった。それまで抽象画については何とも思っていなかったが、あの答えを聞いてから、抽象画が苦手になった気がする。
もちろん、抽象画を理解したいという思いはある。「抽象画が理解できるようになったら、世の中が違って見えるんだろうな」とも思う。世の中に抽象画を描く人は大勢いるのだから、きっと魅力のあるものなのだろう。いつか、何かがきっかけで理解できるようになるのだろうか。
そういえば、20代の中ごろに「こういうのは、年齢を重ねれば、いつか理解できるようになるに違いない」なんて思ってたなぁ・・・。あれから約15年が経ってしまった。いよいよ、年齢を重ねた結果、「年齢を重ねても理解できない」ということが理解できてきた気がする。
< 完 >