町の中で、何人かの冒険者が手持ちの帽子や兜を積み上げて、その高さを競っていた。見たかぎり、5~6個ほど積み上げている者が最高である。私は対抗意識を燃やして、帽子や兜を20個ばかり積み上げてみた。圧倒的勝利に満足した私は、帽子や兜を積み上げた状態で抱えたまま町を出て、駅に行った。
私が駅のエスカレーターに乗ろうとしたとき、後ろから『仮面ライダー響鬼』に登場するキャラであるトドロキさんがやってきた。トドロキさんは、なぜか私のことを「師匠」と呼んできた。私が「普通に名前で呼んでください!!」と頼むと、トドロキさんは言った。
「わかったっス・・・カズキさん! 頼みごとがあるんス!!」
私の名は、カズキではない。私は心の中で「『カズキ』て誰や!!」とツッコみながらも、そのまま話を聞いた。トドロキさんは続けて言った。
「今、テレビの収録中なんスけど、なんか女性にキスされるシーンがあるらしいんス! オレ、女性にキスされるのはイヤなんス!! だから、カズキさん! カズキさんがオレにキスしてくれっス!」
この気持ちの悪い頼みごとを、私は必死で拒否した。しかし、トドロキさんは「カズキさんじゃなきゃダメなんス!!」などと言って、まったく引かない。私がさらに拒否すると、トドロキさんは言った。
「ほっぺにでいいんス!」
その後も、トドロキさんはキスを求め続け、私は全力で拒否し続けた。泥沼状態のまま起床。
< 完 >