何気なくコンビニに入って、商品を手にとり、レジに行った。レジ打ちをしていたのは、50歳~60歳くらいのオバチャン店員。とりあえず、一言一言、声がでかい。
会計を済ませてレジを去ろうとしたら、オバチャンは「クジ、1枚引いてくださいね! ちょっとクジもってきますねーェ!」と大きな声で言い、クジが入った箱を持ってきた。私がクジを引いてオバチャンに渡すと、オバチャンは「当たってたらええんですけどねェ!」と言いながら、クジをめくった。オバチャンは言った。
「当たってますワ!!」
どうやら、カップラーメンが当たったらしい。「どうします?」と聞かれたので、私は「今、いただけますか?」と答えた。すると、オバチャンは言った。
「ちょっと探してきますねェ! コレ、おいしいんですヨ!」
こうして、オバチャンはレジを去っていった。私は20秒~30秒くらいでオバチャンが戻ってくると思っていたが、なかなかオバチャンは戻ってこない。そうするうちに、私の後ろに2~3人の客が並び始めた。気まずい。
結局、2~3分くらい経って、オバチャンは戻ってきた。オバチャンは、両手で輪っかをつくりながら、大きな声で言った。
「探したんですけどネ、なかったんですワ! このくらいの大きさのやつなんですけどネ! 大きいのはあったんですけどネ、小さいのはなかったんですワ!」
こうして、私はコンビニを出た。正直、「コンビニの店員らしくない、ちょっとめんどくさいオバチャンだ」と思った。でも、しばらくして、自分がそんな感情を抱いたことが恥ずかしくなった。よく考えてみれば、私が子どものころによく通っていた駄菓子屋のオバチャンたちは、みんなああいう雰囲気の人たちだった。そして、私はそのオバチャンたちと普通にやりとりをしており、特別な感情をもっていなかった。
あれから約30年が経って、なぜ私は「めんどくさいオバチャンだ」という感情を持ってしまったのだろうか。私は歳こそくったが、子どものころより小さい人間になってしまった気がした。
こんな小さい人間が、学校で倫理を教えたりしちゃってます。
< 完 >